フォースプレイとは

はじめに

この記事では、フォースプレイとは何かについて説明します。

まずは、公認野球規則上に登場する定義や規定を確認して、そこから派生する論点について説明していきたいと思います。

ページ番号は2018年度版公認野球規則の該当ページの番号です。

なお、打者が1塁でアウトになるのはフォースアウトではないですが、これをフォースアウト扱いすることによる弊害は99.9%ないので、記事中はフォースアウトとして扱い、最後にこの点について言及します。

フォースプレイ関連の規則

ここでは、公認野球規則上の規定について紹介し、いくつかポイントを解説します。

フォースプレイとは

まず、フォースプレイについては野球規約の定義のパートに定義があります。

定義30 FORCEPLAY「フォースプレイ」(p191)
打者が走者となったために、塁上の走者が、規則によって、その塁の占有権を失ったことが原因となって生じるプレイである。(5.09b6)

この定義を補足すると、打者が走者になって1塁に進む義務が生じた場合に、すでにいる走者が玉突き式に押し出される形で今いる塁の占有権を失い、次の塁への進塁義務を課せられる場面という、非常に限定された場面での話であることが分かります。

フォースアウトとは

フォースアウトについては、野球規約の5.09b (6)に規定があります。5.09というのはアウトに関する規定で、5.09bというのは走者アウトの規定。

5.09b6 (p60)
打者が走者となったために、進塁の義務が生じた走者が次の塁に触れる前に、野手がその走者またはその塁に触球した場合。(このアウトはフォースアウトである)(後略)

ここで、非常に重要なのは最後のかっこ書きの(このアウトはフォースアウトである)という文言。

何かというと、進塁義務のある走者をアウトにする場合には、進塁先の塁にタッチするだけでなく、走者に直接タッチしてもいいわけですが、その場合もフォースアウトだよと確認的に強調しているわけです。

一般的には、走者にタッチしてアウトにするのがタッチアウトで、塁にタッチするだけでアウトにできるケースをフォースアウトと呼んでいますが、それは厳密には間違いなわけです。

以上を前提に、フォースアウトに関するよくある勘違いを正すと以下の2つになります。

1.打者がフェア打球を打つことで進塁義務が生じた走者をアウトにするには、進塁先の塁にタッチするだけでなく、その走者にタッチしてもいいが、その場合も野球規約上はフォースアウト。

なお、タッチしてアウトにしたんだからタッチアウトで別に何の問題もなく、塁にタッチしても走者にタッチしても同じフォースアウトで何の違いも生じないわけですが、そもそも両者で異なる扱いになる場合があると思っている人なんて皆無で、その結果、この間違いを、「いやそれはタッチアウトではなくフォースアウトである」なんて指摘しても、嫌われるだけで終わります。

2.フライまたはライナーがキャッチされたことによる、走者のリタッチ義務に関しては、走者が戻る前に塁にタッチすれば、走者にタッチしなくても、アウトにできますが、進塁義務の課せられた走者の進塁先でのアウトではありませんから、フォースアウトの定義に該当せず、フォースアウトではありません。

この差は重要で、正にこの勘違いの結果理解しづらくなるのがルールブックの盲点の1点です。

フォース状態の解除

フォースプレイというのは、言い換えればフォースの状態でのプレイですが、野球規約にはフォースの状態が解除される場合も規定されています。5.09b (6)の先ほど引用した部分の次に来る規定です。

5.09b6 (p60)
(前略)ただし、後位の走者がフォースプレイで先にアウトになれば、フォースの状態でなくなり、前位の走者には進塁の義務がなくなるから、身体に触球されなければアウトにはならない。(後略)

これは、後位の走者がアウトになるとフォースの状態が解除されるという規定で、具体的に考えるとわかります。

典型的なものは下記の場合。

<例1>
1アウト1塁で、打者がファーストゴロを打ち、1塁手が処理してそのまま1塁を踏んで打者アウト。

こうなると、打者が1塁に向かうことで1塁走者は押し出されていたわけですが、打者がアウトになると、打者が1塁を占有する可能性はゼロになりましたから、1塁走者としては2塁に向かわず1塁に戻ってもよいわけで、1塁走者から進塁義務が消滅し、すなわちフォースの状態は消滅したということになります。

結果として、この例だと、1塁走者をアウトにするためには、タッチプレイが必要になります。1塁にタッチしても2塁にタッチしてもアウトにはならず、走者をタッチアウトにする必要があります。

ここで、後位の走者がアウトになるとフォースの状態が解除されるという規定が重要で、前位の走者がアウトになってもフォースの状態は解除されません。

<例2>
1アウト1塁で、打者がセカンドゴロを打ち、2塁手が処理してそのまま2塁を踏み、1塁走者がフォースアウト。

この状況だと、打者と1塁走者の二人いる走者の内、アウトになったのは前位の走者たる1塁走者なので、フォースの状態は解除されません。

1塁走者がアウトになろうがなるまいが、打者は1塁に向かわざるを得ず、すなわち、そのまま2塁手が1塁に送球すれば、タッチすることなく打者をフォースアウトにすることが可能です(当然、打者が1塁に到達する前ならば)。

オーバーラン

続いて、フォースの状態にある走者が次の塁に到達したけど、オーバーランしたときの規定があります。

5.09b6 (p60)
(前略)また、走者が塁に触れた後、余勢でオーバースライドまたはオーバーランした場合には、塁に触れた瞬間に進塁の義務を果たしたことになるから、その走者は身体に触球されなければアウトにはならない。(このアウトはフォースアウトではなく、タッグアウトである)(後略)

非常に細かい規定ですから、オーバーランしても、一旦進塁義務のある塁にたどり着いていますから、その走者の進塁義務は果たされたことになり、その後はフォースプレイではないですから、その走者をアウトにするにはタッチプレイが必要で、これはフォースアウトではないと規定されています。

フォース状態の復活

5.09b (6)の規定には、フォースアウトの定義、フォースの状態が解除される場合、オーバーランの取り扱いに続いて、マニアックな、フォース状態の復活が規定されています。

5.09b6 (p60)
(前略)しかし、進塁の義務の生じた走者が次塁に触れた後、どのような理由にせよ、その塁を捨てて元の塁の方へ離れた場合は、再びフォースの状態におかれるから、野手にその身体または進塁すべき塁に触球されれば、その走者はアウトとなる。(このアウトはフォースアウトである)

この規定は分かりにくいですが、それゆえに【注2】という具体例が規約に載っています。

5.09b6【注2】(p61)
たとえば、一塁走者が打球とともに走り出して、いったん二塁に触れた後、その打球が飛球として捕らえられようとするのを見て、一塁へ戻ろうとしたとき、フライを落とした野手からの送球を受けた二塁手は、走者が再び二塁に達するまでに二塁に触球した。この場合、はじめに二塁を踏んだことは取り消され、フォースアウトと認められる。

すごい例ですが、要するにヒットだと思って飛び出した1塁走者は2塁に到達するのですが、外野手が飛びついたのをみて、ヤバいと思って慌てて1塁に引き返そうと逆走を開始、しかし、外野手がエラーして、慌ててもう一度2塁に向かって走り出すというケース。

結論としては、1度2塁に到達しても、逆走してしまうと、もう一度フォースの状態になるから、守備側は走者が2塁に到達する前に、2塁にタッチすれば(走者にタッチしなくても)アウトにでき、これはフォースアウトだと確認しています。

以上が、野球規約上のフォースプレイとフォースアウトに関する規定となります。

フォースアウトと得点の関係

上記で、何がフォースアウトで何がフォースアウトではないかを説明してきましたが、フォースアウトかどうかで、走者へのタッチプレイが必要かどうかという差が生まれますが、実はもっと大きな差が生じるのが得点が絡む場面です。

これは得点に関する規定が関与してくるので野球規約の該当箇所を見てみます。

得点の原則

5.08a (p47)
3人アウトになってそのイニングが終了する前に、走者が正規に一塁、二塁、三塁、本塁に進み、かつこれに触れた場合には、その都度、1点が記録される。

あくまでこれが原則で、下記の例外に該当しない限り、どんな形であれ、3アウト前にホームインすれば得点が記録されます。

なお、文言に「正規に」とある通り、走者本人がタッチアップのスタートが早いとか塁を踏んでないとかしていれば、「正規」の走塁をしたことになりませんから、3アウト前にホームインしていても得点にはならない。

得点の例外

5.08a【例外】(p48)
第3アウトが次のような場合には、そのアウトにいたるプレイ中に、走者(1、2にあたる場合は全走者、3にあたる場合は後位の走者)が本塁に進んでも、得点は記録されない。

(1) 省略
(2) 走者がフォースアウトされたとき。(5.09b6参照)
(3) 省略

この、5.08(a)の(2)というのが非常に重要な規定で、文言そのままですが、3アウト目がフォースアウトの場合は、そのプレイ中にホームインしても得点にはならないことを規定しています。

3アウトとホームインのタイミングに関係なく得点が認められません。

2アウト3塁のチャンスの場面で打者が内野ゴロに倒れるなんて状況はよくありますが、打者が1塁でアウトになる前に3塁走者がホームインしていても、得点が記録されないのは、この例外規定が適用される結果です。

アピールアウトがフォースアウトになるとき

よくルールブックの盲点の1点に関する説明で、「フォースアウトではなくアピールアウトだからタイムプレイになる」なんて表現が登場しますが、実はこの言い回しはちょっと問題があります。

なぜかというと、アピールアウトかつフォースアウトというものがあるからです。

そういう意味では、「フォースアウトか否か」と「アピールアウトか否か」は連動するものではないと言えます(かなり細かい話ですが)。

具体的には、野球規約に5.08原注という規定というか規定の注釈があり、かなり長い注釈なのですが、その最後に下記のような文言があります。

5.08b【5.08原注】 (p49)
(前略)また、フォースの状態での塁の空過や打者走者の一塁空過がアピールによって第3アウトになった場合、すべての走者は正しい走塁を行っていても得点とはならない。(後略)

要するにこれは、フォースの状態の塁の踏み忘れの場合は、すべての走者の得点を認めない、すなわち、フォースアウトと扱うと規定していることになります。

塁の踏み忘れ(空過)はプレーがひと段落した後にアピールによりアウトになるアピールアウトですが、フォースの状態での塁の踏み忘れはフォースアウトとして扱われることになります。

その結果、「アピールアウトだからタイムプレイになる」という言い方は厳密には不正確で、アピールアウトでも、フォースアウトになって、3アウト前のホームインが認められないケースが存在することになります。

フォースプレイをめぐる具体例

1.インフィールドフライをポロリ

(状況)
1アウト1塁2塁の状況。打者が内野フライを打ち上げ、審判がインフィールドフライを宣告。しかし、内野手がまさかの落球。

この時、1塁走者と2塁走者は進塁しなくてはいけないのか。

(結論)
進塁しなくてもよい(もちろん進塁してもよい)。

(理由)
インフィールドフライが宣告された時点で、打者はアウトが確定するので、打者が1塁に向かうことはなく、その結果、打者に追い出される形での各走者の進塁義務も消滅するので(フォースの状態は解除)、各走者ともに、進塁するも塁にとどまるのも自由。

なお、このケースでは落球していますが、捕球された場合、ボールインプレーなので走者は進塁するもしないも自由ですが、リタッチ義務はあります。

2.リバースフォースプレイ

(状況)
1アウト満塁の状況。打者がファーストゴロを打ち、1塁手が処理してそのまま1塁を踏み(2アウト)、続いて2塁に送球して、2塁手が突っ込んできた1塁走者にタッチして3アウト。その間に3塁走者がホームイン。得点は認められるか。

(結論)
認められる。

(理由)
打者が1塁でアウトになった時点で、各走者の進塁義務は消滅しフォースの状態は解除。したがって、2塁上での1塁走者のアウトはフォースアウトではない。

その結果、5.08a【例外】(2)に規定されている、3アウト目がフォースアウトの時は得点が認められないという規定が適用にならず、原則通りタイムプレイとなるため、3アウトより前に3塁走者がホームインしていれば得点は認められる。

なお、この場合、アウトの順番が逆で、2アウト目が2塁での1塁走者フォースアウト、3アウト目が1塁での打者フォースアウトのダブルプレーであれば、3アウト目もフォースアウトになるため、3アウトより前にホームインがあっても得点は認められない。

3.タッチアウトだけど

(状況)
2アウト1塁3塁。打者が痛烈なライナーを打ち、2塁手が飛びつくが落球。しかしすぐさま拾い、目の前にいた1塁走者にタッチアウト(3アウト)。この間に3塁走者はホームインしていた。得点は認められるか。

(結論)
認められない。

(理由)
2塁手が落球した時点で打者には1塁への進塁義務が生じ、フォースの状態となるから、その状態での1塁手のアウトはタッチアウトであってもフォースアウト。

したがって、3アウトがフォースアウトの状況なので、得点は認められない。

4.全部パー

(状況)
2アウト満塁で打者が場外ホームラン。全員一旦はホームベースを踏む。しかし、2塁走者が3塁ベースを踏み忘れていて、守備側のアピールにより2塁走者がアピールアウト。何点入るか。

(結論)
無得点

(理由)
2塁走者の3塁踏み忘れは、フォースの状態での塁の空過にあたるため、フォースアウト扱い(5.08原注参照)。したがって、3アウトがフォースアウトということになり、すべての走者の得点が認められず(3塁走者の得点も認められない)、無得点となる。

打者はフォースアウトになるのか

いかなる結論にも影響を与えないという意味でどうでもいい論点ですが、せっかくなので説明します。

上述しましたが、フォースアウトの定義は下記です。

5.09b6 (p60)
打者が走者となったために、進塁の義務が生じた走者が次の塁に触れる前に、野手がその走者またはその塁に触球した場合。(このアウトはフォースアウトである)

この規定こそが、フォースの状態の走者に関して、走者に直接タッチしなくても進塁先の塁にタッチするだけでアウトにできる根拠規定です。

しかし、よく読むと、主語は、「打者が走者となったために、進塁の義務が生じた走者」ですから、打者は含まれないことになります。

とは言え、打者を1塁でアウトにする場合にも、打者にタッチせずとも1塁にタッチするだけでよいのは周知の事実。

実は、これに関する規定は5.09a (10)です。5.09aの規定というのは打者アウトに関する規定。

5.09a10 (p55)
打者が第3ストライクの宣告を受けた後、またはフェアボールを打った後、一塁に触れる前に、その身体または一塁に触球された場合。

なお、第3ストライクの宣告を受けた後っていう文言は何を意味するのかと気になる人がいるかもしれませんが、これは振り逃げの話。

つまり、フォースアウトの定義を読むと、文言上、打者の1塁でのアウトが含まれないかのように読めるわけですが、それを裏付けるように、打者専用の規定が用意されています。

また、得点に関する規定でも、下記のようになっています。

第3アウトが次のような場合には、そのアウトにいたるプレイ中に、走者(1、2にあたる場合は全走者、3にあたる場合は後位の走者)が本塁に進んでも、得点は記録されない。

(1) 打者走者が一塁に触れる前にアウトにされたとき。(5.09a、6.03a参照)
(2) 走者がフォースアウトされたとき。(5.09b6参照)

つまり、打者の場合は、1塁に触れる前にアウトにされたとき、という打者専用の規定が用意されています。

このように、厳密に規定を見ていくと、打者はフォースアウトにならないといえます。

まあ、とはいえ得点規定の(1)だろうが(2)だろうが、その差はないわけで、どっちに含まれるかによって何らかの結果に影響することはありません。

というわけで、「打者は1塁でフォースアウト」という表現に関して、「その言い方は間違っている、打者はフォースアウトにならない」と主張しても、めんどくさい奴として友人を失うだけとなります。